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知らない世界

第29章 見えない恐怖

「潤、お前飯食ったか?」

「うん、いつも店に出る前に食べさせてもらってるよ。翔さんは?」

「まだだよ」

「じゃあ何か適当に作るよ」

「いいよ。酒飲むし、それに・・・」


手を伸ばし、俺をギュッと握った。


「あんっ・・・何だよ急に」

「それに手料理よりも、食べたいものがある」

「バカっ!明日も学校だし、風呂入って寝るよ」

「じゃあ一緒に入るか?」

「も~・・・」

「時間短縮だ」


何て言いながらも、内心は嬉しい。
マンションに着き、車を降りた。


「・・・んっ?」


思わず振り返った。

   
「どうした?」

「いやっ・・・別に」

「そっか・・・」


マンションに入る俺達2人。
翔さんに気付かれないように、また後ろを振り返った。


「誰もいない・・・やっぱ気のせいかな?」


エレベーターに乗り込むと、俺は背中がゾクッとした。
顔を上げると、閉まっていく扉の間から、女の人の顔が見えた。
思わず“開”のボタンを押した。


「どうしたんだ?・・・おい潤」

「いやっ、今そこに誰か人がいたような」

「誰がいたんだ?」

「いない・・・気のせいだったみたい、ごめん」

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