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知らない世界

第35章 盃

俺はすぐにタクシーを呼んだ。


「翔さん、早く着替えて。
そんなだらしない格好でいったらダメだよ」


俺はスーツを用意した。
何だか戸惑っている様子の翔さん。
タクシーが来るまでに出かける準備をする。


「潤、何持ったんだ?」

「何でもいいでしょ?
タクシー来たから行くよ。ほら俺に掴まって」


ケガ人がケガ人を支えるなんて、端から見たら異様な光景かも。
タクシーの中では、俺達は何も話さないまま。
時折翔さんは、俺の横顔を見る。
俺はずっと前を見ていた。

かずん家に着くと、いつものようにおもてに立っている若い人が車を覗きに来る。


「あっ、兄貴!お迎えにあがりましたのに」

「あぁ、潤が急に行くって言い出したから」

「潤もケガの具合はどうなんだ?」

「ありがとうございます。
まだ学校には行けないですけど少しずつ・・・
翔さん大丈夫?掴まって」

「潤もケガしてるんだから、俺が兄貴を・・・」

「大丈夫です、俺が翔さん連れていきます。
俺達の問題なんで」

「俺達のって・・・どう言うこと?」


俺の言葉に若い人は俺達から離れた。


「あっ兄貴、潤も・・・どうしたんです?」


中から大野さんが出てきた。



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