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知らない世界

第35章 盃

「だから・・・何だ?」

「だから、翔さんと別れるなんて嫌だ!
翔さんと離れて暮らすのなんて、もう俺には考えられない」


うつむき、しばらくして顔をあげ、翔さんの目をじっと見た。


「潤、お前・・・」

「脱ぎ捨てた服を片付けたり、スーツをクリーニング持っていったり、飲みっぱなしの空き缶片付けたり、誰がするんだよ。俺しかいねぇじゃん。
ヤ○ザと付き合ってんだ、こんなケガくらい何でもねぇよ。
そんな覚悟がなかったら、とっくに別れてるよ。
それだけの覚悟がなかったら、今日ここへ来ないよ」

「お前、本当にいいんだな?」

「あぁ・・・」

「まったくお前は・・・
俺達ヤ○ザより度胸があるな」

「翔さん・・・」

「おい誰か、盃を持ってきてくれ。
こんな湯呑みじゃ、格好がつかねぇや」

「はいっ!」


若い人がどこへだかわからないけど、翔さんに言われ、盃を取りに行った。
大野さんと他の若い人達は、座って俺達を見つめていた。

しばらくして杯が用意された。
大野さんが近付き、その盃に酒を注いでくれた。


「もしも別れたいって言っても、離さないからな」

「望むところだ!」


みんなが見届けるなか、俺達は盃の酒を飲んだ。




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