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知らない世界

第35章 盃

それから間もなくして、俺はアパートを引き払い、翔さんのマンションに引っ越した。
後遺症が残るかもと言われていた腕のケガも、徐々によくなっていった。
学校はまだ休学しているけど、リハビリも兼ねてバイトには復帰した。


「潤、あまり無理するなよ」

「はい、ありがとうございます。
でも何かしてないと、体がなまると言うか、じっとしていられなくて・・・
かえって邪魔ですか?」

「邪魔なんて・・・俺としては助かるよ。
お前がずっと来ていないから、辞めさせたのかって、くってかかってくる客もいてな。
今日、お前の姿見たら喜ぶぞ」

「お客さんに、そんなにも思ってもらえて、ありがたいです」

「本当にお前ってやつは・・・
あっ、そう言えばこの前大野さんが来たとき聞いたけど、櫻井さんと盃かわしたんだって?」

「えぇ・・・まぁ・・・」

「お前、そこそこのたんかきったらしいな」

「たんかきったかどうかわからないですけど、自分の考えを全部話しただけです。
この前大将の話を聞いて考えて、それで俺決めたんです」

「余計な事じゃなかったか?」

「そんな余計だなんて・・・
大将のお陰で決心できたんです」

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