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知らない世界

第38章 領域

「うっ・・・」

「大丈夫か、潤」


目を開けると、止血してくれてるのは神崎さんだった。


「ありがとう」

「まさかお前を拐うとは思わなかったよ。
しかもお前に連絡してすぐ・・・
約束、守れなかったな」

「でも翔さん達は大丈夫だから、約束破ってないですよ」

「潤・・・
ますますお前に惚れたよ。
待ってろ、様子を見てなんとか逃がしてやるからな。


オラァ、ここで大人しく座ってな!」


連中をあざむくため、強い口調で俺に言い放つ。
また俺を椅子に座らされた。

どれくらい時間が経ったかな。
連中は朝が来るのを缶ビールを飲んだり、何か食べたりして待っている。
もちろんその中には神崎さんもいる。
ウトウトするヤツがいるなか、心配そうに俺を見ている神崎さん。
うっすらと外が明るくなりかけてきたころ、神崎さんが近付いてきた。
痛みと眠気でボーとしていた俺の口に何かが触った。


「潤、飲めるか?」

「んっ?・・・神崎さん。
ありがとうございます」

「お前は兄貴の相手、俺達に丁寧に話さなくてもいいんだよ」

「かずじゃないんだから、ダメですよ」


ペットボトルのお茶を飲ませてくれた。
神崎さん以外、今のところ変化のない状況で、寝落ちしている。
お茶を飲み終え、ペットボトルを下に置くと、神崎さんがふところからドスを出してきた。


「神崎さん・・・何・・・するの?」


やっぱり神崎さん、俺達を裏切るのか?


「まさか・・・」


ビビって目を閉じると、手が自由になった。


「潤、動けるか?」

「あれっ・・・神崎さん、どうして?」

「みんな眠っているし、外も今手薄になってる。
今のうちなら何とか表通りまで逃げられる。
そこまで行けばタクシーもひろえる」

「でもそんなことしたら神崎さん・・・」

「約束しただろ、お前を守るって」




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