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俺を抱えて扉に向かった。


「今のうちだ。
痛いかもしれないけど、頑張って走っていけ」

「うん・・・
神崎さん、好きな食べ物何？」

「俺は、きんぴらごぼうが好きかな」

「俺、作って待ってるから、絶対戻ってきてね」

「ありがとう、早く行け」

「おいっ、ガキがいないぞ！
ガキが逃げたぞ！」


中にいたヤツが目を覚ました。
倉庫を慌てて出てくると、逃げる俺の後ろ姿を見つけた。


「クソガキ、待ちやがれ！」


追いかけようとするヤツを、神崎さんが食い止める。


「神崎さん！」

「早く行け！」

「テメェ、裏切る気か？」

「裏切っちゃいねぇよ。
名張が解散した時点で俺は名張の者じゃなくなった。
俺を拾って世話してくれた、二宮組の者なんだ」

「何だとコノヤロー！
おいっ、ガキを追いかけろ！捕まえろ！」

「させるか！」


追いかけてくる連中をさらに追いかけてくる神崎さん。
足が痛くて思うように走れない俺は、呆気なく２人の男に捕まった。


「クッソー、離しやがれ！」

「潤！潤を離しやがれ！」


俺を捕まえる男を思い切り引き離した。
俺を抱え、走り出した。
その時、目の前に車が止まった。


「あっちだ！」

「おい待て潤、神崎！」


引き返そうとすると、聞きなれた声がした。
車からおりてきたのは翔さんだった。


「おい、大丈夫か？」

「翔さん」

「兄貴、潤を・・・早く」

「わかった。
おい大野、潤を車に乗せろ」

「はい」


大野さんに抱えられ車に乗り込もうとした。


「う゛ぅぅぅ・・・あ゛ぁぁぁ！」


うめき声に驚き振り返った。


「えっ・えっ・何で？・・・神崎さん！」

「早く行け！」


神崎さんは２人にドスで刺されてしまった。
刺されながら、その２人をくいとめていた。