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知らない世界

第41章 襲名披露

俺は俺で忙しい。
と言うか、大将が忙しい。
翔さんの襲名披露のときに出す料理を、大将が任されたからなのだ。
イコール、手伝う俺も大将と料理のことで打ち合わせをしている。


「前日から仕込むから、店は締める。
準備が出来たら組に持ち込む」

「俺も仕込みから次の日まで全部手伝います」

「兄貴・・・
櫻井さんの仕度やお前の仕度はしなくていいのか?」

「多分翔さん、前日から組に泊まると思いますよ。
そのように準備しておきますから、大丈夫です」


めったにお店をお休みにしない大将。
翔さんの襲名披露に出す料理を試作するために、お店をお休みにしている。


「ん~・・・何か見栄えが・・・」

「大将、これをこう切ったらどうですか?」

「そうだな、この方が栄えるな・・・
よし、この料理はこのカットでいこう」


カットの仕方や盛り付け方、器の色や柄の打ち合わせと大忙し。
何より俺の出した意見もちゃんと聞いて、いいものは採用してくれる。
俺にとって、物凄く嬉しいこと。


「兄貴の大切な襲名披露を台無にするわけにはいかないから」


俺も大将と同じ気持ち。
来てくれた人達に満足してもらえたら、翔さんの株も上がるかな?


「大将、お先に失礼します」

「お疲れ、明日もよろしくな」


通常営業が終わってからの打ち合わせ。
いつものバイトより帰りが遅い。
帰ると翔さんは、ソファーに服を脱ぎ捨て、もう寝ていた。
俺もシャワーだけ浴びてベッドにダイブした。
3・2・1・・・と言うのは大袈裟だけど、1分もしないで眠りについた。
途中で起きた翔さんが俺に気づく。


「お帰り」

と声をかけ、優しくキスをした。
俺は寝ているにも関わらず、翔さんの首に両手をまわした。
無意識っちゃ恐ろしいね。

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