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知らない世界

第41章 襲名披露

襲名披露当日。
翔さんはやっぱり前日から組に泊まった。
俺も大将と一緒に、前日から材料を持ち込み準備をした。


「相澤の兄貴、櫻井の兄貴にこっちの手伝いを言われたんてすけど、何をしたらいいですか?」

「おぉ、すまねぇな。
並べ方、ここに置いておくから、器に盛り付けたら同じように並べてくれ」

「はいっ」

「大将が兄貴なんて呼ばれてるのって、何か新鮮ですね」

「俺が入ったのは大野さんの少しあとだからな。
辞めてもそう呼んでくれて嬉しいよ。
でも今じゃちょっと恥ずかしいけどな」


照れくさそうに笑う大将。
亡くなった奥さんが大将に惚れた理由が何となくわかった気がした・・・会ったことはないけど。


「ご苦労さん」


かずが来た。


「おはよう、かず」

「若、おはようございます」

「今日はよろしくな」


かずはあとネクタイをするだけ状態まで準備していた。


「ある程度済んだらお前も着替えないと・・・」

「えっ!?俺関係ねぇし・・・」

「櫻井の姿を、お前が見ないと意味ねぇだろ?」

「意味もくそも、俺準備してきてねぇよ」 

「部屋に置いてあるから、仕度してこい」


かずの後ろから翔さんの声がした。


「翔さん?」

「兄貴、おはようございます」

「今日は大変な事頼んで悪かったな」

「兄貴の晴れ舞台を台無しにしないよう、頑張ります。
しばらくは大丈夫だから、仕度してこい」

「・・・はい」


翔さんの部屋に入った。
この部屋に来るのは、久しぶり。
たぶん文化祭の打ち上げの日以来かも。


ーカチャッ!ー


久しぶり入った部屋を見回していると、鍵をかける音がした。
不思議に思い振り返ると、抱きしめキスをした。






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