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知らない世界

第5章 仲直りのお礼

黙って暗い外の景色を眺めていた。


「なぁ、潤・・・」

「はい、何ですか?」

「あのな・・・」

「はい・・・」

「・・・いやっ、いいや」

「いいならいいですけど」


そのまま黙りこんだ。
車の中が、ほんのりお酒の匂いがしている。


「今日はごちそうさまでした。
ありがとうございました」

「潤・・・」


車を降りようと、ケーキの箱を持つ俺の手を握った。


「はい・・・!?」


手を握ったまま、振り返った俺の頭を優しく撫でながらゆっくり引き寄せた。
おでこ同士をくっつけると、何故だか俺の心臓はドキドキ、オーバーヒート寸前。
何故だか櫻井さんも、肩で息をしている。


「どうしたんですか?」


握っていた手を離し、俺の頬を両手で包んだ。
そして何か決心したかのように、俺を見つめた。


「・・・!?」


唇が重なった。
触れている櫻井さんの唇が、震えているように思えたのは気のせい?
時間にしてどれくらい唇が重なっていたのかな?
10秒?いや5秒かな?
とても長く感じた。


「おやすみなさい」


唇が離れると慌てて車を降りた。
ドアを閉めると、櫻井さんはすぐに行ってしまった。
俺の心臓はまだドキドキしていた。

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