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知らない世界

第42章 知らない世界

「俺と大野がやられたのを見たお前は、完全にぶちギレたんだろうな。
叫び声をあげて女からドスを奪い、ビビってチャカを撃ちまくってる男に向かっていった。
腕に弾をくらっても怯まず、男の腕を掴みがら空きの腹に・・・」


耳を塞ぎたい。
でもそれは事実だから逃げては行けないんだ。


「女はその流れ弾が何発か当たったのが原因。
だからお前ではない」


俺は言葉より、声を出すこともできなかった。


「これが真実だ。
気を失った時点で多分また記憶がなくなってると思ったから、お前には内緒にしておくつもりだったんだ」

「でもそんなことしたら、組の誰かが俺の身代わりに・・・」

「その辺りは大丈夫。
誰も犠牲になったり身代わりになったりはしないよ」

「どうして?」

「どうして・・・か。
それは俺達はヤ○ザだから」

「わかんねぇよ」

「前にも言ったけど、わからなくていいんだ。
今のままでいいんだ」


また頬を撫でられた。


「もうこれで納得したか?」

「うん・・・でも俺・・・」

「何だ?」

「ぶちギレたとはいえ、俺は・・・
俺はこの手で人を・・・」


両手で顔を覆った。


「あれは正当防衛だ。
お前は俺達を守ってくれたんだよ・・・?
潤、どうした?潤・・・おい潤」


俺は急にパニックなのか、呼吸が荒くなった。


「おいっ、誰かいるか?」

「はい、2代目何か・・・おいっ潤!」

「こいつを病室に連れていってくれ。
あと先生も呼んでくれ」


病室に戻り、先生に安定剤を注射してもらい、その日が眠った。
それから俺は、ただただ黙って外を見つめる日々を過ごした。
事実を知った日から1週間後には、翔さんは半ば強引に退院することになった。






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