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知らない世界

第42章 知らない世界

俺は毎日毎日同じ事を考えていた。
それは入院中からずっと。
退院したら話すつもりだったけど、言い出すことができず、数週間が過ぎた。

今日は病院に行くことになっている翔さん。
会社員じゃないから今日はお休みって言うのも変だけど、1日暇をもらった。
今日こそは話そう。
病院の帰りに以前、高校生のときに連れてきてもらった料理屋を昼御飯を食べに来た。


「久しぶりだな・・・高校生の時以来だよ」

「もうそんなにも来てなかったか?」


ここなら静かだし落ち着いて話せるよ。


あのとき来た少し離れた個室かな?
やっぱ俺には場違いに思える。


「何にする?」

「翔さんに任せるよ」

「お前、そこは変わってねぇな」

「やっぱここ、俺には似合わないよ。
でもそこわって、じゃあ何が変わった?」

「そうだな・・・
俺に対する態度とタメ口」

「えっ!?やっぱダメ・・・だった」

「バカ、そこマジになるなよ。
付き合ってるんだから当たり前だろ」

「マジビビったよ」

「それともうひとつ・・・
ビール飲んでもいいだろ?」

「俺が運転してくからいいけど、体にまだわるいでしょ?」

「大丈夫、平気だよ。
そこも変わっちゃいねぇな」


そんな話をして、料理を頼んで、毎日一緒にいるのにも関わらず、途切れることなく会話をしながら食事をした。
料理がなくなりかけたころ、翔さんはビールを追加した。


「翔さん俺、話があるんだけど」

「何だよ急にかしこまって」

「入院してるときからずっと考えて、自分の中で結論が出て、その気持ちはやっぱり変わらないから翔さんに話すよ」


グラスからも箸からも手を離し、俺を真剣な顔で見つめる翔さん。
一瞬下を向き、大きく息を吸い込みながら顔を上げ、翔さんの目を見た。

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