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知らない世界

第42章 知らない世界

あのときの様に、トイレに駆け込んだ。


「おい潤、大丈夫か?」

「あのときと一緒だ」

「こいつの体、全然酒受付ねぇんだな。
これで自分の店を持てるのかねぇ」


何か言われてるけど、今は言い返す元気はない。
トイレにしばらく座り込んでいた。


「潤、俺帰るから」

「はい・・・ありがとう・・・ございました」


声を振り絞った。
何とか落ち着き、それでも青い顔をして(たぶん)
トイレから出て、ソファーにダイブした。


「ほらよ、冷たい水でも飲め」

「ありがとう」

「酒が飲めなくてヤ○ザに、ましてや自分の店を持つなんてできるのかねぇ」

「うるせぇ、酒が飲めなくてもヤ○ザにも、自分の店だって持てるよ」

「あっそうですか。それは失礼しました」

「あっ、何か今のカチーンときたんだけど」

「あぁ、ごめんごめん。
可愛い顔して怒るなよ。
怒るならケンカするときのような顔をしないと、ただ可愛いだけだろ」

「はぁ、何か気が抜けた。
もう落ち着いたからご飯作るよ」


立ち上がろうとすると腕を掴まれ、抱き寄せられた。
俺も抵抗せず、翔さんの胸に体をあずけた。
高校の文化祭の日、翔さんのマンションでギュッと抱き締められた事を思い出した。
あのときと同じ、抱き締められ、翔さんの胸のドキドキを感じた。


「お前、本当に後悔していないか?」

「後悔?そんなもんしてねぇよ」

「お前に初めてあったときは、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったよ」

「テレビや映画の世界、俺にとって非現実的な世界が今では現実的なものになるなんて・・・」


しばらく抱き合った。


「さぁ、飯の支度しなきゃ」

「今日はどこか食いに行こう。
だから・・・」

「だから?・・・あっ」







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