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知らない世界

第7章 最悪なあとに

「櫻井さんなら、女の人に不自由はしないんじゃないですか?
そんなにもカッコいいんだから・・・」

「カッコいい?
そんなこと言われて、初めて嬉しいと思ったよ。
確かに女には不自由は思いしたことはないよ」


何だよ、さらっと答えられて、軽くショックなんですけど。


「いろんな女と寝たよ。
ひどい奴だと思うかもしれないけど、それはただ欲求を満たすだけのこと」


うん、それは確かにひどい。


「でも、お前は違うんだ。
1分1秒でもお前と一緒いたい、お前に触れていたいって思うんだ」

「・・・」

「年上の、ヤ⚪ザの俺なんかにこんな気持ち悪いこと言われなくても、お前だって女には不自由はしてないだろうよ」


飲みかけの缶ビールを、一気に飲み干した櫻井さん。


「俺・・・」

「んっ?・・・何?」

「俺・・・初めてだった」

「始めてって・・・何が?」

「・・・」


聞き返すなよ、恥ずかしい。
察してくれよ。


「あぁ、そりゃあ男にこんなこと言われるのは初めてだろ・・・」

「・・・キス」

「・・・!?」

「俺、あのときがキス・・・初めてだった」

「マ・ジ・・・で?」

「うん・・・」


背中を向けたままうなづいた。

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