
夜空は百合の花を狂気的に愛す
第2章 オトギリソウ
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双子SIDE
今夜も双子はユリの部屋にいた。眠るユリを囲むように座る2人は小さくクスクスと笑い合う。
「ねえ、夜、今日のあの話なに?」
「何って、俺達の母親の話だよ。綺麗に悲しく可哀想な出来た話だろ?」
「夜ってペラペラ嘘つけるから凄い」
そう、彼等がユリに話したあの母親の話は全くの嘘であった。
確かに彼等に母親はいない。けれど、あの話のように母親に酷い仕打ちを受けていたり、捨てられたりした過去はない。
彼等の母親は2人を出産したと同時に亡くなってしまった。
なので彼等は母親という存在に1ミリの思いもないし、ましてやユリに母親のような存在を求めている訳でもない。
「確かに俺は嘘つきだけどこんな嘘を信じちゃうユリが可愛くてしょうがないよ」
「本当。結局あのことも許したし、ユリってお人好し」
泣き出してしまうユリに駄目押しでついた嘘だが、まさか本当に信じるとは。
純粋で純白な彼女が可愛くておかしくて2人は笑いを堪えたものだ。ユリは悲しくて震えていると勘違いしていたようだが、結果オーライだ。
