夜空は百合の花を狂気的に愛す
第2章 オトギリソウ
日が沈み、陽向は外で夕陽を眺めていた。
足はすぐに治療して貰い、包帯でぐるぐるだが幸い傷は深いものではなかった。あの酷い目眩と息切れはしばらくすると消えていった。
ユリから 帰り待ってる とメッセが来ていたが、チームメイトと帰ると言って断った。
(よりにもよってユリにこんな姿で会えるかっての…)
はぁとため息をついてベンチに座る。
すると自分に2つの影が被った。
相手を見なくても陽向は誰だか分かっていた。あの不気味な程に同じ顔をした男達だと。
「…お前らだろ?俺に何かしたの。」
「ピンポーン!意外と陽向クンって鋭いんだね。もっと鈍感かと思ってたよ」
「生憎様。俺はユリとは違うんでね」
バスケットシューズに入れられたカッターの破片、急な目眩。誰かが人工的にやったことなど見ての通りだ。
そんなことをする者などこの双子しかいないと陽向はどこかで確信を得ていた。
双子は作戦会議の間に部屋に入り込み、シューズにはカッターを、ユリのレモンに薬を混ぜたのだ。
体育の授業の一件から、陽向はずっと双子の行動の意味を考えていた。しかし、まさか有り得ないとその可能性を己の考えが邪魔していた。
「まさか自分の姉に惚れてるなんてな」
双子のユリを見る目を見てわかった。
陽向と似ていて何か違う。根本は一緒なのにどす黒い何かに包まれている双子の目。
それは狂気か愛か。
「…惚れてるなんてそんな簡単なことじゃない。愛してるんだよ。いや、言葉になんて表せない。ユリを俺達だけのモノにしたい。ユリと俺達以外いらないんだよ。邪魔なんだ。」
「俺もユリ以外いらない。お前が1番邪魔。」
2人の瞳は本気で邪魔だという目をしていた。陽向はその冷えきった何かに手が震えるの感じた。