夜空は百合の花を狂気的に愛す
第3章 ムラサキツユクサ
一体その細い身体のどこにそんな力があるのか
明らかに空くんよりも、強そうな男の手首を捻る空くんにびっくりする。
「ッテメェ、離せよ!」
捻られた男も自分より弱そうな男にそうされたのが相当頭にきたのか鋭い目で空くんを睨みつけていた。
そ、そうだ。止めないと…
あっちにはまだ2人いるんだから…!
「そ、空く…」
「ねぇ、なんでユリに触るの?ユリに触れていいのは俺達だけなのに。」
「は、意味わかんねぇこと言ってねえで離せよ!」
「あ、そっか。腕折っちゃえばいいんだ。それから指も1本ずつ全部折ろう」
「てめぇ何言って…ヒッ」
空くんの目は本気だった。
男の仲間も青ざめながら空くんを見つめている。
空くん、一体どうしたの?まるで人が変わったみたいだわ…
「じゃあ腕から…」
「空くん!やめて!」
空くんが手に力を入れようとしたのが分かって私は空くんに飛び付いた。
空くん、今本当に折ろうとしていた…
「…ユリ、何で止めるの?ユリだってさっき痛かったでしょ?こいつに思い知らせてやらなきゃ。」
「っ…お願い、やめて」
「…庇うの?ユリって本当に優しいね。こんな奴、夜だったら殺しちゃってる。それを骨折るだけで済まそうとしてるんだよ?」
「空くん、そうじゃないわ。こんなことして貴方の手が汚れるのが嫌なの。だからお願い、やめて…」
半分本当の半分嘘だ。
空くんに人を傷つけてほしくない。けど骨を折るだなんて…流石にやりすぎだわ。
「…わかった」
空くんはいとも簡単にぱっと手を離した。
すると男達は化け物でも見たかのようにすごい速さで逃げて行ってしまった。