夜空は百合の花を狂気的に愛す
第4章 ハボタン
「今日、ひーくん体調不良で欠席だったのよ。」
「え!?あの陽向が!?」
驚いた顔をする牧くん。
そうよね、私も思ったもの。今まで寝込んだことさえないひーくんが体調不良!?って。
「…陽向、よっぽど精神的にキテたのかな」
ぽつりそう呟いた牧くん。
「…どうゆうこと?」
「え!?あ!何でもないよ!」
焦る牧くんの目は泳いでいる。
絶対何かあるわ…!
「ひーくんに何かあったの?教えて!」
「いや、本当になんでもなくって…」
「嘘!目が泳いでるわ!」
うっと観念したかのように牧くんが溜め息をついた。
「俺が言ったこと陽向には内緒だよ?あいつわざと東雲さんには言ってないだろうから」
「ええ、約束する」
「…この前のバスケの試合の時、陽向様子がおかしかっただろ?」
「ええ…すごく、苦しそうだったわ」
今でもあのひーくんの顔を思い出せる。
今まで1度も見たことないあんなに苦しそうなひーくんは。
「実はさ、試合終わってからコーチが気付いたんだけど、陽向のバスケットシューズにカッターの刃へんが入れられてたんだよ。あいつ、それずっと黙って試合に出てたみたいで…両足ズタズタだったよ」
「誰が…そんなこと…」
酷い…
あの日のひーくんに合点がいく。何か痛みを我慢していると思ったら、そんなことがあったなんて…
だから私が心配しないように帰りも会わないようにしたんだわ。
どこまでも優しいひーくんに涙が出そうになる。
「…っ誰がやったか、わからないの?」
「…うん、残念だけど。最初は勝つために相手のチームの奴等がやったんだと思ったんだけど相手チームもずっと体育館にいたし、他には見当もつかなかった」
「そんな…」
「陽向には黙っておいて。1番東雲さんには知られたくなかっただろうからさ…」
「えーと…それどういう意味?」
いや、なんでもないとまた誤魔化す牧くん。
それにしてもそんなことがあったなんて…
一体誰が…?
ひーくんに恨みを持つ誰か?そんな人あの場所にいた…?