夜空は百合の花を狂気的に愛す
第4章 ハボタン
まあ、でも弟といっても1人の男の子だもの、いつまでも姉にべったりの方がおかしいわよね。
チラリと空くんに目をやると帰ろうと手を引っ張ってくる。
こっちはまだまだ甘えん坊ね…
「空くん、ごめんなさい。実は今日一緒に帰れないの」
「なんで?」
「ひーくんのお見舞いに行こうと思って…もう1週間以上休んでるのよ?流石に心配だわ」
「ふーん…」
興味がなさそうにする空くんにあっと思い出す。
そう言えば私、牧くんに言われたこと聞くの忘れていたわ…!
「ねえ、空くん。前にひーくんのバスケの試合見に行ったじゃない?その日、私が帰ってからひーくんと話した?」
そうだそうそう。これが1番気になってたのよ。
空くんは少し驚いたような顔をしてから、すぐにいつもの表情に戻って首を捻る。
「話してないよ。」
「そう…じゃあ勘違いみたいね…」
「誰かに何か言われたの?」
「え、まぁ…夜くんと空くんがひーくんと話してるところを見たって人がいたの。でも話していないのよね?」
「うん、その人の勘違いじゃない?それにもし話してたら、ユリに言ってるよ」
「そうよね…」
牧くん見間違いしてたみたいね。
わざわざ嘘つく理由も見当たらないし、話してたら話したって言うわよね。
「…見たって誰が言ってたの?」
「え?ああ…ひーくんと同じバスケ部の牧くんって人よ。ひーくんの親友なの」
「ふーん…そいつ邪魔だな…」
「?何か言った?」
一瞬暗い目をした空くんが何か言ったけど小さくて聞こえなかった。