夜空は百合の花を狂気的に愛す
第4章 ハボタン
ひーくんなんだか別人のようだわ。
元気がないというか、生気がない…前よりも細くなったし、纏う雰囲気が暗い。
いつもは太陽のような人なのに…今日はその顔に笑顔が出ることはない。
「…ひーくん、何かあったの?」
「別に、何も無いよ」
「嘘よ。元気ないわ」
「風邪ひいてるんだから、当たり前だろ」
ひーくんらしくない私を突き放す言い方にむっとする。
「私知ってるんだから。ひーくんこの前のバスケの試合で嫌がらせされたんでしょう?それが原因?」
「は、なんでユリがそれ知って…あいつ、牧か…」
「ねえ、どうしたの?こんなに休んで…もしかして足が悪くなった、とか?」
牧くんは血は凄かったけど軽傷だって言ってたけれど…
カッターの破片をいれたまま、試合をずっとしてたんだもの。もしかしたら物凄く悪化してしまったのかもしれない。
もしこれから先バスケができないとかになったら…
そう考えると自分のことのように辛くなって涙が滲む。
「フ、なんでユリが泣きそうなんだよ。俺の足ならもう治ったよ。普通に歩けるし、バスケだって出来る」
「良かった…」
ひーくんがやっといつものように笑った。
その笑顔にほっとする。