夜空は百合の花を狂気的に愛す
第5章 ラベンダー
着けば、空くんはもちろんいなかった。
私の学校は昼休みは体育館の利用を禁止している。だから人の気配は全くない。
ゆっくりと体育館に入れば、そこはいつも通りの体育館だった。
なにも変わったことはない。
空くん、何しにきてたの…?
もしかしてバスケの練習とか?ひーくんの試合見に行ったりするんだもの。案外言わないだけでバスケ好きなのかも。
そう思ったらなんだか可愛くてふふっと笑う。
「後で空くんに聞いてみよう」
なんて思いながらもうここに用はないと体育館から出ようとした時だった。
「…っ…!!!」
「?…声?」
誰かの叫ぶ声がした。
けれど見渡してみても人はいない。
なに?聞き間違い?
いや、でも確実に誰かの声がする。
音を辿るように私は1歩1歩足を進めて行った。
そうすれば体育館の体育倉庫の前に来た。
「おい!誰かいるんだろ!?開けろって!!!」
ハッキリと中から声がする。
この声…
「牧くん!?」
「は!?だれ?ってこの声、東雲さん!?」
間違いない、牧くんだ。
開けろってことは閉じ込められたってこと?一体誰に…
いや、それよりも今はここを開けなくては。
見れば取っ手のところがロープで固く結ばれていて中から開けられないようになっているようだった。
「今開けるから少し待っていて!」
集中しながら一つ一つロープを外していく。