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夜空は百合の花を狂気的に愛す

第5章 ラベンダー


10分したくらいか、やっとロープが外れた。

すると、勢いよく扉が開いて中から牧くんが飛び出してきた。

ハアハアと荒い息をして軽い喘息のようになっているようだった。

慌てて牧くんに近づいて背中を摩る。

「大丈夫!?」

「っごめん。俺、閉所恐怖症でさ…少しすれば治るから」

辛そうに笑う牧くんに胸が痛くなる。

酷い、こんなことをするなんて…

少し経てば牧くんは落ち着いたようで恥ずかしそうに下を向いていた。

「ごめん、恥ずかしいとこ見せて」

「いいのよ。それより誰かにやられたんでしょう?誰がこんなことしたの?」

「…わからない。今日学校きたら下駄箱に手紙入っててさ、昼休みに1人で体育館にきてくれーって。俺告白だと思ってめっちゃ楽しみにきたのにこれだよ。来た瞬間後ろから殴られて気づいたら体育倉庫いき。」

おちゃらけたように話す牧くん。

「あ、でもさ、東雲さんに言うのもアレかもしんないけど体育倉庫にいれられた時に東雲ユリに近付くなって言われたんだよねー」

「え?私に…?」

犯人は私のことを知っている?

いや、近づくなってことは私に近い存在の人?

「声しか聞いてないから誰だか分かんなかったけど東雲さんのこと好きな男だよあれ。ほら、東雲さんって男に人気あるから陽向と俺って恨まれてんのかも」

「そんなこと…」

閉所恐怖症であんなとこに閉じ込められてきっと怖かっただろうに…

原因の私に怒らないなんて、なんて優しいのか。

さすがひーくんの親友だわ。

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