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夜空は百合の花を狂気的に愛す

第5章 ラベンダー


キョロキョロしていた空くんが私を見てすぐに走って寄ってきた。

「ユリ…!どこ行ってたの」

「ごめんなさい、ちょっと…」

「?どうしたの?」

聞いて、みるしかない。
いや、直接聞いてそうって答える?

カマを、かけよう

「私も購買に行こうと思って…行く途中で空くんが体育館から出てくるの見つけて私も体育館に行ってたの」

「え?」

体育館、と聞いた瞬間に空くんの目の色が変わった気がした。

お願い、空くん、関係ないわよね…

まだ頭のどこかで信じたくない私がいる。

「体育館行ったんだ。それで、どうしたの?」

「え?」

「ユリ、体育館行ったんでしょ?何かあったの?」

慌てるでもなく、焦るわけでもない。ただ淡々と話す空くんに何故か恐怖を覚える。

「な、にもなかったわよ…けど、空くんは何してたの?」

「俺?今日午前に体育あったでしょ?その時忘れ物したからそれを取りに行っただけ」

目を細めて笑う空くん。

牧くんのことは言ったらダメな気がした。

そして確信した。

空くんは嘘をついてるって。

なんでかわからない。けど私の勘がそういっている。

どうして嘘をつくの?いやそれよりもどうしてあんなことをしたの!?

声を大にして聞きたいのに空くんの淀んだ黒い瞳を見ると何も言えなくなってしまう。

「ね、ユリ、お腹空いた。早くご飯にしよ」

平然とそう言ってのける空くん。

あなたは一体何を考えているの?

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