夜空は百合の花を狂気的に愛す
第5章 ラベンダー
夜はそんな愛子の気持ちを全て見透かしていた。
「愛子さん、俺の事好き?」
「え?う、うん!!もちろん!好き!!愛してる!!!ユリなんかよりも!!」
勢いよく迫る愛子に内心笑いそうになりながら、夜は悲しげに眉を落とした。
「そっか。でも、ごめんね。もうこの関係終わりにしたいんだ」
「え…?」
ピタリと時間が止まったかのように愛子が目を見開いて固まる。
愛子にとって好きな男からの終わりを告げるその言葉はまるで死刑宣告かのようだった。
「…っなんで!?なんでよ!?あたし何かした!?あたし、ずっと夜のために身体貸してあげてたじゃん!!ユリにバレるようなこともしてないし、え?あたしに飽きたの?なに?どうゆうこと?」
「…愛子さん、落ち着いて」
夜がヒステリックになる愛子を優しく抱き締めれば、まだ息は荒いが大人しくなった。
「愛子さんのせいじゃない。ただ俺、やっぱりユリさんのことが好きなんだ」
「だ、から…ユリは姉だから結ばれないって…だからあたしと代わりに…」
壊れたオモチャのように呟く愛子の肩を掴んで夜が愛子と目を合わせる。
「愛子さん、明日俺ん家にきてよ。ユリさんと同じ家だから場所はわかるでしょ?」
「…うん…でも、なんで?」
「そしたら全部わかるよ」
そう言った夜の目はニヤリと厭らしく細くなった。