僕は君を連れてゆく
第12章 デリバリー攻略book
家について着替えて部屋を見回す。
この、ソファだってあなたが選んだくせに。
手を洗えば、色違いの歯ブラシが2本、そっぽ向いている。
「俺たちみたい。」
並んでいても同じ方向を見ていなかった。
あなたの残り香を捨てる。
歯ブラシ、整髪料、化粧水。
お箸、マグカップ、スリッパ。
この部屋着だって、あなたが俺にくれたもの。
そして、冷蔵庫の隣にある棚の扉を開けた。
あなたが部屋に来るときにだけ出していた灰皿。
「捨てよ。」
ごみ袋に投げ入れたらマグカップとぶつかり
ガチャンという音がした。
俺の気持ちもこうやって捨てれたらいいのに。
部屋着も脱いでごみ袋に入れた。
もう、引っ越そうかな…
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
流れる涙を拭いて鍵を開けた。
「お待ちどうさまですっ/////」
デリバリーの彼はやっぱりいつものおっちゃんじゃなくて、若者になっていた。
そして、その若者は玄関を開けた途端、すぐ顔を赤くして後ろを向いてしまった。
「えっ?」
あっ…自分の格好が酷すぎる!
「すいません。」
「いや、こちらこそ…」
いい匂い。
美味しそうな匂い。
いつもの匂いにまた、涙が…
お金を渡した。
「明日の20時に同じの持ってきてくれる?」
ちょうど明日は休みだ。
部屋を片付けよう。
「え?明日?」
「よろしくね。」
無理矢理、ドアから押し出した。
「食べて早く元気になってくださいね。」
ドアの向こうから優しい声がした。
顔を赤くしてたけど、目尻に深い皺が出来ている。
「かっこいい人だったな。」
ダメダメ。
もう、そんな風に考えちゃダメ!
割りきらなくちゃ。
パンツ一枚のまま、ラーメンを食べた。
もう、泣くのは今日で終わり。
明日からまた、いつもの俺になればいい。
だから…
「食べて早く元気になってくださいね。」
彼の声を思い出した。
「地球、守ろ…」
ゲームの続きを始めた。