僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
「にのはさ、今でもあの人のこと好きなの?」
いつものように仕事が終わって、待ち合わせして、
飲んで帰る途中。
梅雨も明けて、夜中でも夏日なことが続く毎日。
そんな暑い日でも手を繋いで帰りたいとまさきが
言うから手を繋いで歩いてる。
この辺りはもう人も少ないから、気にすることなんてないんだけど。
「なに、急に?」
この公園を過ぎればもうアパートだってところで
立ち止まって聞いてきた。
「今でも好きなの?」
手を引かれて公園の中にあるベンチに座らされた。
誰もいない公園。
大通りからも離れているからとっても静かで。
あの日みたい…
「何、考えてるの?」
「え?」
握られていた手をさらに強く握ってきた。
「出会ったときからそうだけど、にのって意識がここにないときあるよね。」
まさきとは出会ってもう5年になる。もっとか。
いわゆる恋人になったのは2年前だ。
「どこか遠くを見てる。誰かのことを想ってる。」
「なんで、そんなこと急に言うの?」
セミの声がする。
まさきの首に汗が伝う。
あの日もそうだった。