テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


──────────────
5年前─

高校3年の冬、体育の授業が持久走だった。

走りたくなくてサボって旧校舎につながる階段に身を隠してたんだ。

遠くから体育してる奴等の声がする。

制服のまま来たけれどやっぱり、寒い。

吐く息が白くて、指先がかじかむ。

「この場所は失敗だ…」

寒さに耐えられないと思って移動しようとしたら、
ピアノの音が聞こえた。

この階段を上がって渡り廊下を渡っていくと旧校舎につながる。

旧校舎にピアノなんて…
まさか、でちゃった?
幽霊か?

怖いもの見たさで階段をゆっくり上がっていった。

一段、一段。

一番上まで登って渡り廊下を渡った。

一歩、一歩。

やっぱり、こっちからピアノの音がする。

吹きっさらしのこの場所は風が直接体に当たって
すごく、寒い。

5年前まで、使われていたらしいこの校舎。
忘れ物なのか運動靴や傘、割れてる鉢の数々。
いくつかはツルを巻いて階段の手すりを上っている。

1つ、1つ教室の中を覗きこんで誰かいるのか確認していく。

授業をサボっているということ、誰もいないはずの場所からピアノの音がしたこと…
俺の心臓は100メートルの短距離走を何本も走った後みたいにドキドキしていた。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ