
僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
誰かいる…
こちらに、背を向けてピアノの椅子に腰かけている男性がいる。
顔が見えないからもう少し近づこうとしたら
何かに躓いた。
ガチャン
「あっ!って!やべっ!」
無造作に置かれた鉢の1つを蹴飛ばしてしまった。
そして、教室のなかにいた男性が立ち上がって
こちらを向いた。
「松本せんせい…」
驚いた顔でドアを開けて俺の前にしゃがんで
「けがはないか?」
そう言ったんだ。
この松本先生は産休に入った音楽の先生の変わりに来た人で、今朝の朝礼で挨拶があった。
ここの、卒業生らしい。
一緒に校歌を歌おうと校長先生が言って、
松本先生が指揮をした。
タクトを握る指が長くて綺麗だと思った。
凛々しい顔は時々、微笑みながら体育館にいる
俺ら生徒全員を見渡していた。
俺は目が離せなかった。
「大丈夫です…」
立ち上がろうとしたら、脛が赤く腫れているの気がついた。
「…っつ!」
「ほら、肩貸せ!」
俺の腕を取り先生の首に回して担いで教室のなかに入れてくれた。
「座れ。」
椅子に俺を座らせてかがんだ。
そっと、左足の制服のズボンの裾をまくっていく。
「少し腫れてるな…」
俺を見上げた松本先生と目があった。
