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僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


「俺のことなんて書いてる?」

「気になるか?」

そりぁね…
先生は口に手をやり、笑いを堪えているようで…

「なによ?」

「3年A組、二宮かずや。」

「かずなり!かずなりって読むの!」

目を大きくして、頷いて
「3年A組、二宮和也。器用でピアノやギターが弾けるらしいが、それを披露してくれたことはありません。高音も低音もでる。素晴らしい声の持ち主。だが、それを披露してくれることはほとんどありません。だって…」

「………」

「素晴らしい評価じゃないか。」

「そう…」

なんだか、恥ずかしい。
自分で聞いておいてなんだけど…

「校歌のときもちっとも口が動いてなかったな…」

「え?」

壇上で指揮する先生を見ていたんだ。

「歌ってみろよ?」

ピアノに向かって座り、校歌を弾きだした。

あの、タクトを持っていた指が滑らかに鍵盤の上を滑る。
「~♪♪♪♪♪」
先生が歌いだして…
俺も一緒に歌った。

校歌をこんなに楽しく歌ったのは初めてだ。

「いい声だ。」

「そう?」

「ピアノ弾いてみろよ。」

その時間、先生と歌ったりピアノを弾いたりして過ごした。

チャイムがなって、俺を担ぎながら新校舎の保健室に連れていってくれた。

そして、後から聞いた話だけど、楽器を運ぶのを手伝わせて怪我をさせてしまったと、体育の先生に連絡を入れ謝っていてくれたらしい。

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