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僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


明日の時間を確認して大野さんと別れた。

ホテルまではそう遠くないから歩いていくことにした。

この街に帰ってくることになるなんて…

まだ、0時まえなのに人っこ一人通らない。

駅と大野さんと一緒にいた居酒屋のちょうど中間あたりにあるホテル。

街開発の一環で田んぼの真ん中に出来たらしいホテル。このあたりの田んぼも買い占められて商業施設に変わっていくそうだ。

ゴールデンウィークあたりに始まる田植え。
田植えが始まると夏がくるなって。
まだ緑の稲。
これが黄金色に色づく頃、トンボがたくさん飛んで…
懐かしいなぁ…

ホテルに入ると周りが田んぼに囲まれてるのを忘れくらいにかしこまった造りになっていて…
すこし、笑える。

チェックインして部屋に通してもらった。

ロビーのかしこまった造りに比べて部屋は至って
シンプルだ。

荷物を置いてベットに倒れこんだ。

大野さんは俺に何も聞いてこなかった。

聞かれても、なんて答えればいいのかわからない。

だけど、言えることは…

もう二度と先生とは会えないということ。

「せんせい…潤せんせい…」

胃ガン。
ガンなんて最近は手術すれば治るんじゃないの?

「せんせい、苦しかった?痛かった?」





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