
僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
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あの日から俺は放課後に旧校舎へ足を運んでいる。
松本先生が、授業で使う資料を整理したり教材の確認をしているのをただ見ている。
「そんなにイイ男か?俺は?」
「自分で言う?ね、ピアノ弾いてもいい?」
「構わないよ。」
俺は高校2年生のときに親が離婚してここに
引っ越してきた。
母さんは水商売をしながら俺を育ててくれた。
その事でクラスのやつから距離を置かれているのに
気がついた。
元々いた学校だって離婚したことであること、ないこと言われてきたから慣れてるつもりだった。
でも、やっぱり、心のどこかで新しく友達が出来て楽しい学校生活ってを期待していたみたいで。
慣れというのは恐ろしく一日のなかで、クラスの誰とも会話をしないという日がでてきて、それはそれで、安心している自分がいた。
俺と話したことで相手が何か言われたらかわいそうだし。
3年になって大野さんと同じクラスになった。
何を言うわけでもない。
気がつくと隣にいた。
そして、大野さんのお友達のまさきとも友達になるんだけど。
体育祭、文化祭などのイベントも二人のお陰で楽しく過ごせたわけだし。
「ショパンだな。」
俺の弾くピアノに先生の鼻唄が混じる。
楽器は一人で出来ることだから昔から好きだった。ピアノ、ギター。独学だけど。
二人で同じ音を奏でることがこんなにも楽しいなんて。
「受験はどうするんだ?」
「もう決めてある。行きたい大学があるから。」
「そうか。」
