僕は君を連れてゆく
第2章 クレーム対応術
「まじで?翔さんが?」
「料理とか掃除とか、全然ダメ!」
「なんか以外だなぁ~‼翔さん、何でも出来ます!っていう世の中のイケメンの象徴みたいな顔してるから(笑)」
「なんだよ、ソレ!俺、そんなんちげぇしっ!」
だいぶ、酒が進み気がついたら、”翔さん“、”潤“と呼びあうようになっていた。
ここはホテルの一室…
ではなくて、会社のそばにある大衆居酒屋。
”ホテル“なんて言葉に聞こえたのはやっぱり、俺の体はどこかおかしいのかもしれない。
ただ、いまこの場所で見る翔さんは会社で見る櫻井部長とは違う顔だった。
口を大きく開けて笑う。
冗談も言うし、自虐がスゴくて驚いた。
「潤は?料理すんの?」
「あっ、俺っすか?時間があればやりますよ。今、水に凝ってて…」
「水?水道水?」
「どうやって、水道水に凝るんですか~」
「全然、わかんねぇもん!」
「水素水っていうんですけど…水に人工的に水素を混ぜるんです。ダイエットにいいとか話題になりましたよ?」
「マジで?全然知らねぇ!」
そう言ってジョッキの残り少ないビールを飲み干した。
ゴクリと嚥下とともに動いた喉仏。
「なぁ、ここから家近いんだよ。ウチで飲み直さね?」
「えっ?部長の家行くの?それってどうなの?」
「俺がいいんだから、いいだろ!ほら、行くぞ‼」
カウンターで飲んでいたおかげで俺の右半身は猛烈に暑かった。
櫻井部長が隣で笑いけてくる。
時々、自身の唇に触れながら話す。
これは癖なのか?
ガキみたいに笑ったり、天使のような微笑む。
コロコロ変わる表情に俺の右半身はもう石化しそうだった。
「じゃ、行きましょ‼」
立ち上がってコートを取ろうとしたら、よろけた。
「あぶねっ!」
腰に腕が回った。
やや下から覗き込むように
「酔ってるか?」
石化した…
俺、大丈夫か?部長の家行っても…