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僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


大野さんはすでに大学が決まっていて、年明けにある絵画のコンクールに向けて作品を学校で作っている。

「にの!」

外は風吹いて寒い。
首をすくめて「寒いね?」
と言った。

まさきは俺のことが好きだと思う。

俺に聞きたいことがあるんだと思う。

「おーちゃん、今日も描かなかったの?」

「気分が乗らないんだって。」

「ふーん。芸術的センスがある人の考えてることはわかんないな。」

「確かに…あの人、感性が独特だからね。」

「うん。大学もあっという間に推薦で決まってるんだもん。一言くらい教えてほしかったな。」

「そう?あの人が決めたなら俺は応援するけど。」

「応援するよ!当たり前じゃん。でも、離れ離れになるんだから、一言くらい言ってくれてもさ…」

まさきの言いたいこともわかる。
でも、こればっかりは仕方がない。
自分で自分の道を決める年齢になったんだ。

信号で止まった。
指先が冷たくて口元に当てて息を吹きかける。

まさきが俺を見てる。

「にのも遠くに行くの?」

信号が青になった。

歩き出そうとしたら腕を引っ張られまさきの腕の中に抱きすくめられた。

「行かないでよ…にの。」

耳にかかる息が熱い。

まさきの熱だ。

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