
僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
その年のまさきの誕生日は覚えていない。
俺はプレゼントを取りに帰らなきゃならなかったのにすっかり忘れてそのまま、まさきの家に行ってしまった。
しかも、帰る途中に先生に「また、明日」と言ったことを思い出したけど、明日から冬休みだった。
俺たちは受験生だから登校は自由で教室や図書室などを勉強に使ってもいいことになっている。
先生たちも俺たちに勉強を教えてくれるので学校にいるけど、松本先生は音楽だから…
そう、会えないのだ。
まさきの家からの帰り。
「どうした?」
大野さんは自転車で俺は歩いてる。
「なにが?」
「楽しくなかったの?」
「楽しかったよ。けど…」
「けど…?」
「冬休みだなと思って。ねぇ、大野さんは好きな人いる?」
「なんだよ…急に。いないけど。」
「本当に?」
「なんだよ?いないとダメなの?」
「そうじゃなくて…」
「にのは?いるの?」
「…多分…、好き…。」
「分かんないんだ。知りたいんだ…もっと。どんなとこに住んでるんだろうとか、普段着はどんななんだろうとか、電話の声はどんなだろう?って…これってさ…」
「好きなんだね。その人のこと。」
「…うん。好き…」
「だからか。冬休みだもんな。」
「…???」
今日はクリスマスイブだ。
あちこちの家の庭はきれいにイルミネーションでキラキラしている。
先生の部屋にもツリーはあるの?
「会いたいよ…。」
