
僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
「おぅ。ニノ、迷わなかった?」
「うん。大丈夫だった。」
大野さんのアパートは大野さんのアパートだった。
生活感がまるでない。
そうじが行き届いていると言われればそれまでなんだけど…
「麦茶でいいか?」
「うん。ありがと。」
小さなテーブルにコトリとグラスを二つ置いてくれた。
「さっき、まさきから電話かかってきた。」
「うん。」
「あの頃に戻りたいか、って聞かれた。だけど、答える前に意地悪なこと言ってごめんって言われた。」
大野さんはグラスの中の麦茶を飲み干した。
「俺、まさきのこと大切なんだ。でも、あいつには伝わってないみたいで…先生のこと、話さなければ良かったのかな…」
まさきに、居酒屋で先生が亡くなったことを伝えて、お葬式に一緒に出ようって誘ったんだ。
でも、まさきは少し考えるって、仕事のこともあるからって言って…
それで、帰りの途中に行っておいで、と言われたんだ。
にののなかでいつまでも先生が特別なのはわかっているつもりだし、それでいいと思っているけど、
俺は一緒に行けないって。
「よく、言ってたな…」
大野さんは昔からまさきの恋愛相談を受けていたらしい。
