僕は君を連れてゆく
第2章 クレーム対応術
「はい。お客様相談室、松本でございます。」
商品に関する不具合があった場合、その商品をうちの本社に送ってもらい、確認をとるようになっている。
そして、なぜ、その不具合が生じたのか検証するのだ。
「しかしですね…はい…」
今回も松岡につかまった…
「なんで、俺がわざわざ、こんな壊れたもんを郵送しなきゃならないんだよ!めんどくせぇ!取り来いよ?電話ごしに謝ってもらってもわかんないんだよね?本当に悪いと思ってる?誠意ってやつ、見せてもらいたいなぁ~松本さんの‼」
電話ごしに汚いケラケラという笑い声が響く…
頭っに来たっ!我慢の限界!今日こそは言ってやる!
「っ!」
文句を言おうとしたら、目の前に部長がいて代われと言っている。
「ただ今、部長へ代わりますので…」
内線に切り代え部長へつないだ。
ここへかかってくる全ての電話は録音されている。
言った、言わないの問題が起きたこともあったし、きちんと対応することが出来たかを後日、確認する必要がある。
そっと、隣のデスクの二宮が寄ってきた。
「ここんとこ、また酷いでしょ?部長に一緒に聞くように言ったんだよね!」
「マジか…」
何を話してるのかここからは分からないが松岡なんかの相手を部長がしてるなんて…
気になって部長室の方へ視線を向けてしまう。
部長室は一部がガラス張りで出来ていて中からブラインドが掛かっている。
そのブラインドはほとんど下りているから中の様子はここからは見えない。
数分…だと思う。でも、数十分、もっと長く感じた。
内線がなる。
「え?そうなんですか?」
そう言ったら、二宮が俺に可愛くウィンクして席に戻った。
「ありがとうございます。はい。わかりました。」
部長は、どんな対応をしたんだろう。
もう松岡から、苦情の電話は来ないだろうと言った。
どんな対応をすればあの松岡は納得して電話をきったんだろうか…
部長が部屋からでてきた。
「松本…」
部長室へ呼ばれた。