僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
先生は白い煙になって空へ登っていった。
あの時の先生の白くて綺麗な肌を思い出した。
そして、先生は小さい骨壺に収まった。
それはゆうこさんが抱えている。
「にの、このあと、どうする?」
大野さんは目を真っ赤にしていた。
「ゆうこさんを待つよ。あとで連絡するから先に帰っててよ。」
「一人で大丈夫?」
大丈夫だよ、と答えて俺は外に出た。
自動販売機で缶コーヒーを買って一口、飲んだ。
先生の淹れてくれるコーヒーはいい香りがした。
スーパーで買う豆だって先生は言っていたけど、俺が今、自分で豆を買って自宅で淹れても先生が淹れてくれるコーヒーのようないい香りはしない。
「何が違うんだろ…」
先生は俺が県外の大学を受験してきた日、先生の自宅に招いてくれた。
そこで淹れてくれたのはカフェオレだった。
俺がコーヒー苦手なのを知っていたんだ。
不味そうに口元を歪めるのを見たかったって言われたんだ。
「二宮さん?」
ゆうこさんがいた。
隣に並んで歩くと小柄で可愛らしい雰囲気がある。
「涼しいところで話しましょう。」
そう言って駐車場にきて、ゆうこさんの車に乗った。
「急に声をかけてしまって…驚いたでしょ…」
前を見ながら話しかけてくる。
その横顔からはなんの感情も読み取れなかった。