僕は君を連れてゆく
第15章 会いたい
「もしもし?今、駅まで送ってもらった。」
『そっか。迎えにいこうか?』
「ううん。大丈夫。一人で帰るよ。わかった。うん。ありがと。うん。またね。」
一人で考えたいと思った。
俺のこと。
先生のこと。
まさきのこと。
これからのこと。
俺はもう一度、先生が書いた手紙を見た。
この手紙の中で先生は俺の気持ちをありがとう、
と言ってくれた。
でも、俺のことをどう思っているのかをきちんと書いてはくれなかった。
高校時代も、一度も俺に好きだ、とか、会いたい、とか、そんな言葉をかけてくれることはなかった。
嘘でもいいから言ってほしくて俺のことをどう思ってるのか聞いたこともあった。
でも、笑いかけてくれるだけで俺の欲しい言葉を言ってくれることはなかった。
そういうことなんだ。
先生はきちんと教師として俺に接していたんだと思う。
体の一線は超えても、立場の一線は超えなかった。
それが、俺と先生の関係なんだ。
先生の特別でいたかった。
先生の全てを知りたかった。
それが叶ったのか、わからないけどそれでいい。
ずっと、会いたかった。
会って、あの時、俺をどう思っていたのか、今、どう思っているのか聞きたかった。
ずっと、会いたかった。
先生にずっと、会いたかった。