僕は君を連れてゆく
第16章 ぶりかえす
「お見舞いのついでに報告ね。」
そう言った相葉さんは鞄からファイルを取り出して
書類を見せてきた。
「二宮さんが取りかかってたやつ、俺引き継いだんだけど…ここの、発注なんだけど…」
それは俺が初めて一人で任されたもので、企画は部署全体で作ったものだけど、進行表や発注、相手先の確認など、全てを一人でやらなきゃいけなくて、俺は気合いが入りすぎていてこんな、熱で休むなんてと思って無理したら結局、全てを奪われて…
奪われてなんて、傲慢だな。
自業自得だ。
体調管理出来てこその仕事だ。
「ごめんね…迷惑かけて…」
「いいよ。引き継いだって言うと違うか、今、中継ぎっていうの?」
「中継ぎ?」
「早く退院してさ…二人でやろうよ?元々、これを一人でなんて無理だよ。まだ、俺らそんな経験ないのに。アポ取るのだって苦労しない?だから、ずっと主任に言ってたんだ。二宮さんと一緒にやりたいって…」
「そ…そうなの?」
「うん。毎日、切羽詰まった顔してて…すごい心配してた…」
心配…
俺の心配をしてくれてたんだ…
でも、なんで?
俺たち、ただの同僚だろ?
「はーい!夕食ですよ~」
ナースのバカみたいな声が響いた。
「あっ、二宮さん、点滴、それで終わりなので終わったらナースコール押してくださいね。」
俺は肺炎になりかけていたらしいが、お腹は問題ないからすぐにお粥で普通のおかずがでた。
「うまそうじゃん!ね?」
「そうかな~なんか、なに、この緑の…」