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僕は君を連れてゆく

第17章 共有




昨日は、おもしれぇことがあった。





家に帰りたくなくて。
まぁ、帰ったって誰もいないし。

ばぁちゃんの家に行こうと電車に乗った。

さびれた町だけど、この静かな町が俺は好きだ。

母ちゃんのことも父ちゃんのことも嫌いじゃない。
だから、どちらか、なんて選べない。



ばあちゃんの本屋に住み着いた猫がシャッターの閉まった魚屋の前にいる。

「おい!もう、魚はないぞ。」

しゃがんで頭を撫でる。
ゴロゴロと喉を鳴らす。
そろそろ、名前をつけてやろうかな。
ばぁちゃんに相談してみるか。


ばぁちゃんの本屋のドアを開けようとしたら、
中からドアが開いた。

そして、俺にドシン、とぶつかった。

ん?
こいつ…
とこかで…

ものすごく、でかいリュックを背負った男だった。

綺麗な顔だった。
あの瞳。

何よりもあの、眉毛。

どこかで…

「ばあちゃん?」

「おや、智。ちょうどいいところに来た。変わって。」

「いいよ。ねぇ、さっき、来てた奴。」

「ん?さぁ…お前と同じくらいの男の子じゃないかね。」


ばあちゃんは店舗の奥の部屋に入っていった。

なんか、買ったのか…

奥に行くと漫画の上に手帳?
定期入れだ。
そっと、開いたら名前が書いてあった。
=松本潤=

まじか…
なんで、こんな店に…

にしても、ここは…
「へぇ…あいつ、こんなの読むんだ…」

明日、あいつは俺を見たらどんな顔するんだろう。

退屈な毎日が面白くなりそうな気がして俺は
声を出して笑った。




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