テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第17章 共有




「ない…」

定期入れがない。

昨日、学校から帰る時はリュックのポケットにあった。
本屋は学校とは反対方向だから定期は使わずに切符を買っているから、本屋に行く時はどうだったか…
リュックを変えてないはずだから…

まさか、本屋に…

まだ、買ってもらって一週間しかたってなかったから親にも言えず…

今朝は切符を買った。

「ねぇ?潤!今日バイトは?」

「いや、定期、どっかに落としたみたいでないんだよね。」

「まじで?じゃぁ、今日どうしたの?」

クラスの友人と普通に話していた。

いつも通り朝。

定期入れをなくしたこと以外は。

でも、あいつが…






昼休みも終わる頃


「松本くーん!3年の大野先輩が呼んでるよ?」

大野?
誰だ?

「なんすか?」

「君が、松本くん。松本潤くんだよね?」

教室のドアに凭れている大野先輩は俺を上から下まで舐めるように見た。

とっても感じが悪い。

「そうですけど…なんなんですか?」

俺より背の低い大野先輩は笑ってこう言った。

「人気者の君の秘密、俺、知ってるよ。」

「………」

左のYシャツのポケットから出したもの。

それは、俺が探している、定期入れだった。

「探してたんですよ。ありがとうございます。」

大野先輩の手から定期入れを受け取ろうとしたら
「いや、いや…どこにあったでしょう?」

また、俺の定期入れをポケットに戻した。

「放課後、美術室に来てよ。返してあげる。」

鼻の頭をポリポリと掻いて手を振って帰っていった。



午後の授業はちっとも頭に入ってこなかった。

なんで、あいつが持っているんだ?
俺の、秘密って言ったよな?

なんだ…
なんだよ…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ