僕は君を連れてゆく
第2章 クレーム対応術
メダカってこんなに小さいんだな…
「小さいねぇ。可愛いねぇ。部長と二人でお世話するんだ?」
「翔さん、世話なんて出来るかな…部屋もあんな汚いのに…この間、片付けてどうなったかな?また汚してるかな?」
「へぇ~。翔さんって呼んでるんだ?」
「うん…、え?なに?」
「お部屋のお掃除もしてるんだ?」
良いこと聞いちゃった~♡ってオフィスを出ていってしまった…
「おい!二宮!マジか…」
「フフフ。」
やばっ!気が緩んでる。
業務中なのに、メダカの育て方なんて本開いてるし!
おまけに二宮に翔さんって呼んでることがバレた。
「ダメだ~公私混同してるよ…」
「大丈夫か?」
右の肩を叩かれた。
「しょっ、ぶ、ぶちょっ!」
「部長な?なんだよ?」
大笑いしながら部長室へ入っていった、と思ったらひょっこり頭をだして手招きしてる。
「おれ?」俺は声を出さず自分に指差して確認したら大きく頷く翔さん。
部長室へ入った。
水槽の中にはあのあと、メダカを2匹買っていれた。
2匹仲良く肩を並べて泳いでいる。
メダカに肩はないか…
「2匹肩並べて泳いでるだろ?可愛いよな。」
「えっ?」
「メダカに肩はないか…」
同じこと思ってる…
たまらなく、嬉しい。
「そんな笑うなよ。」
「え?笑ってないですよ!」
「かーおーがーニヤニヤしてた!」
マジか…ダメだ…顔に出ちゃう…緩みまくってる…
「おい!いつまで笑ってんだよ~」
二人で顔を見合わせ笑った…
俺は翔さんが好きだ。
人として尊敬してるだけだとか、部長だからとかそんなの関係なくて…
いつまでも、その、笑顔を俺のためだけに見せてほしい。
「今日さ、家で飲もうって言ってただろ?あれ、延期でもいい?」
申し訳なさそうに翔さんが謝ってきた。
「仕事?」
「予定より長引きそうなんだ。会議。それに…」
「それに?」
「部屋が…」
「部屋が?」
「全部、オウム返しだな!汚いんだよ…」
最後の方は声が小さくなっていった。
「片付けに行きましょうか?」
「は?」
「いや!何言ってんだろ。すみません。」