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僕は君を連れてゆく

第17章 共有

 放課後



二宮に「感想聞かせてね?」と言われて別れた。
なんの、感想だよ…

二宮にはなぜか、バレた。
「多分そうだから言うけどさ、松本ってホモ?」

二宮の顔はいつもと変わりがなくて、何を考えてるかわからなかったけど、つい俺は、そうだ、と答えてしまった。
そうしたら、二宮は
「女にモテるのにな、お前。」とだけ言った。

今まで恋愛をしてきたか?と聞かれたら俺はしてきてないと思う。
恋愛に興味がない、そうやって過ごしてきた。
自分の好みのタイプもよくわからない。

漫画の世界は漫画の世界だから、って。
俺には漫画のような恋愛は出来ないって。




美術室に来たら、ドアが開いていた。
窓枠に肘をついて校庭を眺める先輩がいた。
筋の通った鼻。
柔らかそうな耳。
薄紅色の唇。

「…大野先輩…」

クルっと振り向いた先輩はやっぱり、怪しい笑顔で
「おせぇな。」と言った。

先輩の方へ足を進めると先輩は体をズラして俺の
スペースを開けた。

窓からは心地よい風が吹いていて、先輩の髪をゆらゆらと揺らしている。

「何、見てるんすか?」

「ん?あいつ。」

指を指した先にいたのは、野球部。

「あいつ?」

「ピッチャー、やってるやつ。あれ、俺の元カレ。」

ピッチャーマウンドでキャップを取り汗を拭う人。

「元カレ…」

「この間、フラれちゃった。受験に集中したいって。」

すると、マウンドに小走りで寄るジャージ姿でロングヘアーの女子。
タオルを受け取りまた、去っていった。

「あれが新しいあいつの彼女。」

「面食いなんですね…元カレさん。」

「それ、褒めてる?」

見上げた時に見えた、八重歯。

「褒めてるつうか…そう思ったから…」

「ふうん。そういうときは褒めてます、って言えよ。」

しばらく、二人で野球部を眺めた。

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