
僕は君を連れてゆく
第17章 共有
「松本くんさ…大野書店のお客さんなんだね?」
ジッと野球部を見てるから何を考えているんだろうと顔色を伺っていた。
夏の終わりの太陽はグラウンドにいる生徒たちの
影を伸ばしている。
「大野…書店…?」
「さびれってからわかんねぇか…」
制服のズボンの後ろポケットからスマホを出して
スライドしながら、あった、あったと画面を俺に見せてきた。
「俺のばあちゃんなんだよね…あの本屋のばあちゃん。」
「………っ!!!!」
そこにはいつも俺が見てる本屋のレジで猫を撫でるしわくちゃな手と、優しく見つめるおばあさんが写っていた。
「常連さんなんだよね?いつも、ありがとーございまーす!!!」
そうだ。
あんな風に黄昏て、外を見ていたから、
失恋した話なんてしてくるから、忘れてた。
「忘れ物だよ?」
胸ポケットから定期入れを出した。
「松本潤。8月30日生まれ。趣味はホモ漫画集め?」
あの時、ぶつかったのはお前だったのか…
「なんで、わざわざ、〇〇まで買いに行ってんの?あの漫画、読んで何すんの?ナニ、すんの?」
なんてことだ…
誰にも知られたくなくて、あの本屋に行ってたのにこんな形でバレるなんて…
すぐに取り繕って否定すればよかったかもしれない。
でも、それが出来なかった。
「デカイリュック背負ってさ…先日は3冊、ご購入頂いたみたいで…」
バカにされてる。
分かっている。
いくら俺がホモだからってBL漫画を読む理由にはならない。
そんなこと言ってもきっと、伝わらない。
「松本はさ…あるの?」
じっとりと俺を見つめてくる。
そう、このオーラだ。
「な、に…を、」
ジリジリと距離を詰めてくる先輩。
