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僕は君を連れてゆく

第18章 涙雨


「俺を抱いてよ…」

「…え…」

「だめ?俺じゃ勃たない?」

「…なんで…」

「俺さ、フラれたんだけど…そいつ、女もイケるみたいでさ…結婚するんだって…」

「…そう…」

「そいつにさ、言われたんだ…また、俺と会いたいって。やっぱり、俺がいいって。でも…でも…奥さんにバレる訳にはいかないから、そこらへんわかってるだろって…俺、今まで我が儘なんて言ったことなかった。愛されるって思ってたけど…そうじゃなかった…都合がいいときに会える、それだけだったんだ…」

ムシムシするこの、夜。
かずの口から放たれる苦しい言葉の数々。
星一つ見えないこの暗闇が、かずの苦しみを全て覆い尽くしてくれたらいいのに。

ほぅっと一つ、ため息をついたかずは俺見て言った。

「相葉さんを好きになりたいっ!」

涙が伝う頬。
下げた眉。
水分を含んだ瞳。

こんなことを言われてダメだ!なんて言える男がいるなら会ってみたい。

「俺の会社にいるんだ。ムカつくぐらい幸せな奴等が。俺が出来なかったこと、やりたかったことをやってるんだ。男同士とかそんなの関係ないって。愛し合ってるってこういうこと言うんだって奴等が。俺も相葉さんとそうなりたい…」


その二人を思い出しているのだろうか…
緊張が解れたその顔には笑みが浮かんでいる…

「俺となら?」

「うん。相葉さんがいい!」

握りしめてる拳を見て、あぁ、すごく緊張てるんだなって。
俺のこと好きなんだなって。

俺は駆け寄ってかずを抱き締めた。

「初めて見たときから…かずの笑顔が見たかった…」

どんなに話をしていてもどこか投げやりで、適当なところがあったかず。

それが、最近変わってきたのを俺は感じていた。

仕事は部署が変わったからだと思っていたけれど、それだけではないようだ。

身近にいる、憧れの二人がかずを変えたのかもしれない。

「その二人に俺も会いたいな。」

「まじで、胸焼けするよ?」

我が儘を言ったことがないって言ってたな…

「かず、俺にはなんでも言ってね?俺、受け止めるから。」

「え?」

「うーんと、甘やかしてあげるっ!!!」

「うーんと?」

「うーーーーんと!!!!!」

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