僕は君を連れてゆく
第2章 クレーム対応術
「…じゃぁ、頼むよ…」
家の鍵を俺に渡してくれた翔さん。
彼氏に合鍵をもらう彼女の気持ちがちょっとだけわかった気がした。
「んふふ…」
こうやって、誰のか帰りを待つなんて、久しぶりで…
ソワソワ、なんだか落ち着かない。
翔さんの家のソファに座って渡された鍵を眺めていた。
インターホンが鳴った。
玄関を開けた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
鞄を俺に渡してくる。
受けとる俺。
だから、新妻かっての‼
「すげぇ、いい匂いする!」
ズンズンとキッチンまで真っ直ぐ入っていった。
鍋の蓋を開けて感嘆の声をあげてる翔さん。
「うまそぉ~」
「このテーブルで飯食うのいつぶりだろ?」
カレーを、頬張る翔さん。
何でも美味しそうに食べてくれるから作りがいがある。
「幸せだ…」
「ん?」
スプーンが口に入ったまま目線だけが俺に向いた。
「いや、翔さんの彼女になる人は幸せだなって。」
どういう意味だ?と顔に書いてある。
「作ったものをこんな風に食べてくれるなんてすげぇ、嬉しいと思うから…」
パチパチと瞬きをしたと思ったらコップに半分程入った水を飲み干した。
「俺は…彼女の方だ…」
「え?」
「俺の彼氏になってくんない?」
「えっーーーーーーー!!!!!」
そんなに驚くことかな?なんて言いながら空になったコップに水を汲んでる。
翔さん、ソッチなんだ…
ゴクッ、ゴクッとまた水を飲んでる。
上下する喉仏から目が離せない。
「で?」
「で?」
「返事聞かせてくれよ?」
「返事?なんの?」
「俺の彼氏になってくんないの?」
俺のカレーはすっかり冷めていた。