僕は君を連れてゆく
第2章 クレーム対応術
メダカは元気に泳いでいる。
餌をやろうとしたら
「もう、あげたよ」
翔さんが入ってきた。
今日は休日でオフィスには誰もいない。
来週から新しい商品が店頭に並ぶためその商品についてまとめていた。
俺達はあれから“恋人”になった。
「ここがトリセツだけだと難しいから質問の電話がくるかもしれないな。」
「店頭で商品を、実際に手にとってもらえるといいですよね。」
部長室のブラインドを開けた。
「ここは開けないの?」
「開けないよ。特等席だから。」
水槽がすぐそばにあるからな、って思ったら後ろから俺に覆い被さるようにして開けたブラインドをまた閉めた。
「なんで?」
「ここから覗くと…潤の席がちょうど見えるんだ!」
ブラインドを少し下げてオフィスの中を覗いてる。一緒になって覗くと俺の席がよく見えた。
「ここから、よく見てた。悩んだり、イライラしたり…時々、笑うんだよな…それがたまらなく可愛くて…って、俺、変態じゃね?」
「すっげぇ!変態!」
振り返って抱きついた。
おっ!って抱き締めてくれた。
「潤…」
この声は…
顔を持ち上げたら、優しくキスされた。
そっと、チュッて。
「まとめちゃおうぜ!」
「はい!」
「これで、とりあえずは対応できるだろ?最初が肝心だからな。」
会社からの帰りスーパーへ寄った。
カゴにビールやおつまみをぽいぽい入れてくる。
「待って。これまだ残りある。これは買うより作った方が安い。」
いくつか元の所へ戻してもらった。
「俺んちのキッチンは潤しかわからないんだよな」
「やればいいのに…」
「俺が?」
「俺が!」
「料理?」
「料理!」
無理じゃね?って笑いあって、会計をして翔さんの家に向かう。
「ただいま~からの、おかえりぃ~」
玄関を開けてハイテンションな翔さん。
リビングに続くドアを開けたらその理由がわかった。