僕は君を連れてゆく
第28章 ハンプ
潤に支えられながら風呂場まできた。
「使い方、わかるだろ?」
離れていこうとする、潤の腕を掴んだ。
「ごめ…、俺、ほんと…ごめ…」
一人になりたくない。
怖い。
潤を見たら、泣いていた。
「かず…」
抱き締められた。
頭を撫でて、力強く。
「うぅ、う…」
俺は泣いた。声を殺して泣いた。
潤の肩が俺の涙で濡れる。
でも、潤はずっと、俺を抱き締めてくれた。
「かず…」
時々、名前を呼びながら。
俺は怖くて震えたいたけど、潤が抱き締めてくれたら落ち着いた。
「潤も怖いの?」
潤の体も震えてる。
「…ぃ…」
「え?」
「悔しい…」
潤は怒りで震えていた。
潤の唇から血が出ていた。
殴られたからだ。
「痛い?」
そこに触れた。
潤は首を左右に振った。
唇に触れた手を潤が握った。
そして、人差し指に口付けた。
「俺が守るから…お前のこと、守るから…」
潤は俺をまっすぐに見て言った。
力強くて優しい目。
「潤…」
腫れた唇を重ねた。
そのあとは…
潤のお母さんが警察を呼んでくれて、俺は全てを話した。
ソイツは逃げていたけど、青少年育成条例違反で逮捕された。
潤に花瓶で殴られたことや俺も同意の上だった、みたいなことを話したらしいけど。
聞けば、母さんの店でも無銭飲食したり店員に怒鳴ったりと好き勝手にやっていたらしい。
そして、俺はやっと普通の暮らしが出来ると思った。
でも、そうじゃなかった。
母さんは俺がソイツを誘惑したと言った。
そして、俺のせいで店で働けなくなったと。
潤の両親が俺の変わりに母さんに話してくれたけど、母さんは俺を責めた。
そうか、俺だったんだ。
俺は邪魔物だったんだ。
潤の胸のなかで母さんと潤の両親が言い合いしてるのを聞いた。
父さんも俺が嫌いだったんだ。
母さん、ごめんね。
潤は泣いていた。
綺麗な涙だった。
俺は涙で濡れる潤のまぶたに口付けた。
潤の涙は甘かった。