僕は君を連れてゆく
第4章 春の色
「許可とれたんで行きましょう。」
「いいの?」
櫻井はめっちゃ、乗り気だけどやっぱり、同居人がいるんじゃさすがに申し訳無い。
「彼ももうすぐ帰ってくるみたいだからちょうど夕飯食べれてラッキーって言ってるんで大丈夫です。」
またもや、爽やかな120点の答えが返ってきて驚いてしまった。
会計しようとしたら、すでに櫻井が済ました後だった。
「ご馳走さまです。」
松本くんが櫻井に頭を下げた。
「出世払いな?」
松本くんの頭を撫でながら言う櫻井の顔は優しかった。
「タクシー拾う?」
「歩いていけますよ?運動がてら歩きましょうよ。」
お酒と店の熱気で火照った体に外の空気はとても、気持ちよかった。
「大野さんは昔から櫻井先輩と知り合いだったんですか?」
「就職活動中に会ったんだよ。毎回、会うたびにたくさん、荷物抱えてさ。説明聞いて向こうがすぐに、返事出来ないような質問するんだよ。」
「へぇ。見てみたかったな。」
「仕事してて思うだろ?ソツがなくてなんでもできるじゃん?でも、くだけたらあんな感じでさ。」
俺等より数歩前を歩く櫻井は少し足元がおぼつかなくて、多分、後ろにいる俺等に話しかけているためか声を張り上げていた。
「ちょっと、先輩。静かにしてくださいよ~」
松本くんが櫻井の腰に腕を回し支えて歩きだした。
「なんだよ~松本~俺はまだまだ大丈夫だぞぉ。」
「ありゃ、だめだなぁ。」