僕は君を連れてゆく
第4章 春の色
「ここの2階のはしっこです。」
階段を登りながら、櫻井が降ってくるかもしれないと気が気じゃなかった。
「はーい。お邪魔しまーす‼」
鍵は開いていた。
「どうぞ。ただいま。」
玄関を開けたらリビングに続く廊下が見えた。
その先にすりガラスを挟んだドアがあって人影が右へ左へと行ったり来たりしていた。
「ニノ、テンパってるな。ニノ?入るよ~。あっ。櫻井さん。待って!ちょ!」
酒が回りいつもよりさらに強引になった櫻井が許可を得る前に靴を脱いでさっさっと上がっていった。
「あっ!待って!着替えがっ!」
ガチャと櫻井がドアを開けたのと同時に声が聞こえた、が、もう、遅かった。
そこには、バスタオルを体に巻き付けた男らしき、人がいた。
「櫻井さんっ!もう!って、お前なんでそーやってタオル巻くの?」
振り返った彼は、やはり、彼で男だった。
「ごめんなさいっ。こんな格好で…」
「「あっ!!!」」
「タンポポのハンカチの…」
「昼間はありがとうございました。」
と、俺に頭を下げてくる。
「いや。こちらこそ。ハンカチ持ってくれば良かったな…ありがとうございました。」
「ねぇ、着替えれば?」
松本君の声を聞いて、恥ずかしそうにリビングを出ていった。
櫻井は…
ソファに寝かされていた。
「気持ち良さそうに寝やがって…」
イビキをかいて寝る櫻井をうらめしく思う反面、また、彼に会えたということでテンションが上がっているのがわかった。
「大野さん、適当に休んでくださいね。」
松本くんはキッチンに入っていった。