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僕は君を連れてゆく

第35章 空の色


「あれ?ミルクは?」

「ニノはブラックだろ?」

「でも、今は甘いの飲みたい気分だからさっきそう言ったじゃん!」

「ん。」

大野さんが自分の飲んでるマグカップを俺に差し出す。

「ん?」

見たら、ミルクが入ってる。
飲んだら甘い。

「半分こな。」

俺のブラックと大野さんのミルクと砂糖の入ったのと。

俺は甘いのが飲みたい気分だけども結局、いつも残す。
それを大野さんは分かっていてわざと半分こって言ってくれてる。

優しい。

そういうとこ、好き。


俺のトゲトゲしてた胸はまあるくなった。


ソファーに並んで座ってコーヒーを飲む。
ちょっとだけ離れた隙間を埋めるようにおしりをずらして大野さんの肩に頭を乗せるように体を傾けた。

「なんだよ?」

「ごめんね?」

「なにが?」

「さっき…」

もう一度、謝ろうと思ってマグカップをテーブルに置いて大野さんを見つめた。

大野さんもマグカップを置いて俺の頭をワシャワシャと撫でる。

「チュウして?」

「えっ?!」

「コーヒー淹れたから、な?」

な?って。

恥ずかしい…

でも…

目を閉じてスタンバイしてる大野さん。

くそぅ…

綺麗な顔だ…

ぎこちなく近づいていく。

したら、パッと目が開いた。

「えっ!!!!????」

「やめた!」

スルッと、俺から離れていく。

やめた!って。

なんで?

精一杯、
恥ずかしいけど、
キスしようと…

「今日さ、ちょっと出かけね?」

俺の気持ちなんて知るはずのない大野さんは何もなかったような顔してる。

「…いいですけど…」

テーブルに置かれた二つのマグカップを俺はシンクに下げた。



キス、したかった…


言えないけど…


鼻唄を歌いながら出かける準備をしてる大野さんの背中を見て俺は、なんで、「やめた!」と大野さんが言ったのか考えていた。

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